【TESEN文庫 第16話】わたしナイスミーチューが言えなくて

JOURNAL|TESEN

大阪シェアハウスの運営スタッフSHUです。

 

シェアハウスで働くわたしが気ままに連載小説を書いております。

 

「シェアハウスってどんなところ?」「どんな暮らしがあるの?」

 

この小説はそんな方へ向けて書いています。

 

ときどき実話なフィクションです。

 

一緒にシェアハウスの暮らしをのぞいてみませんか?

 

シェアハウスで起こる素敵なことが少しでも多くの人に届いたら、そして豊かな暮らしを多くの人に。

 

 

|前回までのお話

 


「ハロ〜♪」

 

今朝も陽気な英語がリビングから聞こえる。

 

最近、外国人の入国緩和が始まり、私が住むシェアハウスにも一気に多国籍になった。

 

24年間、日本から出たことのない私。

 

何となく、これからも日本で過ごしていくんだなぁと勝手に思っていた。

 

でも彼らを見ていると、世界の広さを教えてくれることが多い。

 

島国、日本に飛行機で何時間もかけてやってくる。

 

その凄まじい行動力に私がちっぽけに見える。

 

英語なんかも話せない私は、苦笑いで苦し紛れの「ハロー」と「イエス」が精一杯。

 

英語を話す時はどこか恥ずかしく感じる。

 

本当に私の英語が合っているのか、間違っているのか、自信がない。

 

ただ、自分の考えていること、思っていることが相手に伝わった時の幸福感は母国語にはない気がする。

 

Googleの翻訳を使ってみたり、画像を見せたり、独特のジェスチャーで伝えてみたりと、必死だ。

 

日本語で話すときは、主語を略してしまったり、端的に伝えようとするあまり、簡単に会話を終わらせてしまうときが多い。

 

それは、便利だが、どこか寂しい時もある。

 

嬉しい。楽しい。悲しい。恋しい。

 

喜怒哀楽をストレートに相手に伝えることを大人になるにつれて忘れてしまっているのかも。

 

時に武士道の関係で、自分の感情を表に出さないことが美徳にされている。

 

その美徳は時に、相手に伝わらないという悪い方向に転がる時もあるかもとふと思った。

学校で習ったはずのナイスミーチューが言えなかった。

 

初めて会う人に言うフレーズというのは知っていたが、言うタイミングが分からなかった。

 

でも最近はタイミングではないことに気づいてきた。

 

本当に君に会えて良かったよ!これからよろしくね!っと伝えたい時に言えば良いんや。

 

そういえば、私が初めてこのシェアハウスに来た時を思い出した。

 

初日でとっっても緊張していた私に、声をかけてくれる人がいた。

 

「今日から入居の人?やった〜!本当に会えること楽しみにしてたよ!」

 

「大阪は初めて?これから色んなところに一緒に行こうね!」

 

初めて会った人との距離感ではない笑。

 

でもそれがとても心地よかった。

 

まるでずっと友達だったような。

 

彼女の言葉には、心から私が入居したことを嬉しく思っていると感じた。

 

その会話で一気に緊張と不安は無くなったとのを鮮明に覚えている。

 

普段の生活で、初めて会う人にはある程度話すフレーズは決まっている。

 

「本日からよろしくおねがいします。」とちょっぴりお辞儀が定番の形だろう。

 

でもこのシェアハウスは違う。

 

「今日から入居?、今からカラオケ一緒に行かない?」

「今日の夜は暇?たこ焼き食べれる?」

 

初日から、全力で新しい友達を受け入れてくれる空気感と人がいる。

 

敬語もない。悪気もない。裏表もない。

 

いつでも誰かを受け入れる。

 

簡単そうで難しいことを簡単にやっている人たちがいる。

 

 

続く。

 

|前回までのお話

 

TESEN文庫も気付けば16話まできちゃいました。きまぐれ執筆なので更新時期はバラバラですが、「実は読んでます!」と言う励みの声をかけてくれる人が意外にも多く本当に嬉しいです。17話もお楽しみに♪

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